ーーーキリマンジャロ登山5日目ーーー
バラフキャンプ(4,600m)→ステラポイント(5,756m)→ウフルピーク(5,895m)→バラフキャンプ→ムエルカキャンプ(3,000m)
23:30キリクライマーズで借りたダウンのお陰で暖かく眠れました。
でも、夕食やミーティングを済ませ、寝たのは22:00頃。
睡眠時間1時間半は完全に寝不足です。
りょうくんも私も3日目のバランコキャンプから継続して、軽い頭痛が残っています。
軽く高山病にかかっているけど、このまま登って大丈夫かなぁ。
寝不足と寒さと頭痛で顔が怖いよ。
あ。それは細い目がさらに細くなっちゃっているだけか!
あったかい飲み物とクッキーを食べて、
12:30、いよいよサミット開始。
ガイドのエリー、サブガイドのバリキ、ポーターの1人と私たち4人。
ヘッドライトを付けて、ゆっくりゆっくり登っていきます。
最初は岩場。
見上げれば先に出発したツアーのヘッドライトが綺麗に並んで見えます。
どんな道が待っているんだろう。
足元しか見えないから、余計に楽しみが膨らみます。
ポレポレな私たちは休憩を多めに取りながら進みます。
その都度、凍りかけた水を飲んだり、トイレに行ったり…。
そうそう、サミットで大変なのはトイレです。
特に、女性!!!
水をたくさん飲んでいるのでトイレに行きたくなるのはしょうがない。
でも、寒いし、めんどくさい!
男の人は楽でいいなぁ。
2時間くらい歩くと、岩場から砂場になってきました。
砂では足が取られて歩きにくい。
ついに、コリンが歩けなくなってきました。
バリキが荷物を持ってくれます。
そのうちヤガも同じ状態に。
りょうくんも頭痛がひどくなってきたみたい。
必然的にペースはゆっくりになり、頂上でご来光を見るのは難しそう。
でも、せめて水平線から太陽が上がるところがみたい!
その一心で足を運びます。
聞こえるのは自分の息と、みんなが進む音。
ハァハァ。
ザックザック。
もう、誰もおしゃべりする余裕がありません。
止まっては水を飲み、止まっているくらいの速度で歩き始める。
それでも、みんな頂上に向かって歩みを進めます。
息をするを、少し頭が痛みます。
だんだんそれが強くなってきました。
ついに、りょうくんも私も荷物を預ける事に。
「大丈夫?」
「大丈夫だよ。」
こんな会話を繰り返しながら。
でも、だんだんその会話も減っていきます。
一歩だすと、一呼吸すると、一声発すると、
酸素を消費して頭が痛くなる。
辛いけど、もうちょっと、二人でがんばろう!
言葉にはできなかったけど、顔を見合わせて、お互いに励まします。
気持ちは林家ペーパー・パー子。
いや、おすぎとピーコ。
出来れば、福山雅治と吹石恵。
毎朝、起きたら福山雅治が居たらすごいなぁ。
いや、逆に吹石恵がいてもすごいかぁ。
妄想も高山病に入るのかなぁ?
体力も気力も尽きそうになって、
頭がおかしくなってきた頃、
ついにこの時が。
まだ頂上じゃない。
けど、この景色をここで見る事ができた事が感無量。
サブガイドのバリキと感動と分かち合います。
よく見るとこのオトコ、
泣いていました。
よっぽど大変だったみたい。
28歳になって、朝日を見て泣くなんて。
年を取って涙もろくなったのかなぁ。
振り返ると、ずっと見てみたかった氷河。
朝日に照らされて赤くそまる氷河。
最高の一瞬です。
太陽にパワーをもらった私たちは気持ちを切り替えて登り続けます。
朝日を見てから30分後の、6:00ついに頂上の一部ステラポイント(5,756m)に到着!
キリマンジャロの頂上は3つのポイントがあります。
富士山と同じで火口があるため、火口の周りは全部頂上。
だから、ステラポイントでもキリマンジャロ登頂という事になります!
コリンとヤガはこの頂上で下山する事になりました。
二人とも登頂おめでとう!
お互い限界の中、喜びを分かちあいます。
私たちは、もちろん一番高い所、ウフルピークを目指します!
ステラポイントから一番高いウフルピーク(5,895m)までは約40分~1時間の道のり。
私もりょうくんも、頭痛もあるし、意識も少しだけど朦朧としています。
でも、歩き始めると目の前にはずっと見てみたかった氷河がたくさん。
赤道直下なので氷河があるなんてすごく不思議。
近年、温暖化の影響か、かなり溶けちゃったみたいなので、
ゆくゆくは消えてしまうのかな?
さっきの朝日に照らされた赤の氷河と違って、
透き通るような青い氷河。
ふらふらしながら歩いていると、
前からモシのホテルで一緒だったタクミさん・ヒカリさん夫婦が来ます。
4泊5日のマラングルート(山小屋ルート)で、私たちより1日遅いスタートだから、
頂上で会えるかな?って話していました。
私たちは激遅ペースだったので、もう会えないかと思っていたけど、
会えました!!!
お二人はすでにウフルピークまで行ってきたとの事。
ヒカリさんはガイドに支えられてるけど、
タクミさんは仕事帰りに飲みにでも行くような軽快な足取り。
全然高山病の症状もなく、楽しい登山だったよう。
私たちもあとちょっとだ!!!
また、元気をもらい歩き続けます。
そして、7:35。
念願のウフルピーク(5,895m)到着!
登れた。
登れたよ〜!
嬉しいよ〜!
涙が出るかと思いました。
でも、泣きませんでした。
感動の涙よりも、ちゃんと登りきった事でホッとしています。
エベレストトレッキングでは無念にもヘリで下山する事となってしまいました。
その時は、りょうくんの体調も悪化しているし、
私も急激に頭痛、吐き気、発熱、倦怠感が襲ってきました。
一回高度を落として、再度チャレンジする事も考えたし、
ヘリを使わず自力で下山したかった。
でも、体調はそれ以上に悪く、ガイドのラムさんの判断で、
ヘリにて下山する事となりました。
帰って来てからは、病院で検査して、点滴して、
翌日も通院して、2週間くらいはずっと咳と汚い痰が続いていました。
下山した判断はあっていたのかもしれないけど、
やっぱり自分で歩ききれなかったのが悔しい。
半年間、ずっと悔しかったです。
キリマンジャロに登り始めてからも、
景色や歩く事の楽しさも十分に感じれたけど、
「絶対に登り切りたい」と強く思っていました。
だから、楽しかったけどずっと登りきれるか不安でした。
「上りきらなくても、挑戦しただけで良いし、頂上に登ることだけが登山じゃない」
分かっていながらも、本気で頂上まで登りたかった。
登山を始めてから、ここまで頂上にこだわったことはありません。
その頂上に、今、2人で立てています。
お互い、支えあいながら、時々けなし合いながら登って来たけど、
2人で登りきれた。
嬉しいよりも、ホッ。
それが、キリマンジャロ初登頂の気持ちでした。
エリーには、時間も遅いし、空気が薄いので、
ココでの滞在時間は15分以内と言われました。
周りを見渡して、写真を撮って、即下山開始。
私はもうふらふら。
氷河に見守られながら1時間かけてステラポイントに帰ってきたけど、
そこから先は砂場の急な下り。
下りはブレーキをかけながら歩くので、筋肉を使います。
でも、その筋肉の栄養である酸素は、体の中に残っていません。
意識はさらに朦朧としてきて、だんだん1人で歩く事ができなくなってきました。
そんな異変に気付き、ガイドのエリーが肩を貸してくれました。
2人でぼちぼち歩いていく…。
と、思いきや
「早く高度を落とさないといけない!」
エリーは歩くペースを速めます。
私はもう、自分の足でブレーキをかける事が出来ないから、
エリーにもたれかかりながら必死に歩きます。
そして、所々走る。
え?走る~!
急な砂場はブレーキかけるとしんどいからと、走りました。
コレがいけなかった(と、思っています)
酸素的に限界の中、早く高度を下げようと走ったら、
症状はさらに悪化!(笑)
あとから考えたら、ここはまだ5,000mの世界。
走ったら、高山病悪化するだろー!
でも、この時は4,600mのバラフキャンプまで下りれば、
高山病は治ると思って走っていました!(笑)
だって、高度下がったでしょ?
でも、よく考えれば、2,500mから高山病になると言われているから
4,600mまで下ったって治るわけがない!
思考が回らなくなるのも高山病の症状ですね。
なんとか、バラフキャンプ(4,600m)が見えてきました。
でも、着いた頃には、1人で5mも歩けない。
50m先のトイレに行くのに10回休憩。
テントで休みたかったのに、トイレに時間がかかりすぎて、
休憩できませんでした。
オトコの人はその辺で用が足せていいなぁ。
そして、今日の行程はここで終わりじゃありません。
3,000mの地点にあるムエルカキャンプまで下らないと!!!
昨日の夜も1時間半しか寝てないし、
サミット後の休憩もなし。
1人で5mも歩けない私は限界でした。
そして、心配したヤガが余っていたダイアモックス(高山病予防薬)をくれました。
そうだった、ヤガは医者だった。
本当にありがたかった。
お礼をいって、言われた量を摂取します。
コリンとヤガはダイアモックスを飲んでいたからか、
高山病の症状はないらしい。
自分の事だけでも限界だったけど、
りょうくんも頭痛が悪化していました。
そして、暑い、暑いと言っていたから熱を測ったら
なんと39.5℃!!!
マラリアか???
レスキュー隊にも電話?してくれたみたいですが、
話がうまく通りません。
そして、言われた一言。
「レスキューは1グループ1回しか使えない」
つまり、私かりょうくんか1人しか使えない。
1人20ドル、国立公園側に保険料を払っているのに意味がわかりません。
それでも良いから呼んで欲しいとお願いすると、
レスキュー隊のメンバーなのか?誰かわからないけど、
初めて見た人が
「ここまでは来れないから、すぐ下の平らなところまで歩こう」
と、言ってきました。
エリー達も
「そこまで下がればレスキューは来るかもしれない」
と、言ってくれたのでエリー・バリキの2人に支えながら歩き始めます。
レスキュー隊のメンバーらしき人は、平らな所まで40分から1時間で着くと言っていました。
確かに、それっぽい所が見えます。
なんとか、あそこまで頑張ろう。
りょうくんと励ましあいながら歩きます。
実際には励ます体力(声を出す力)がなかったから、
アイコンタクトと「大丈夫?」「うん」って会話だけ。
これだけでも、十分な支えになります。
そして、念願の平らな所。
「エリー。ここだよね?ここに来ればレスキュー隊来るんだよね?」
支えてもらわないと、全然歩けない私。
なんとか、ここまで来たら助かると思っていました。
すると、
エリーが
「ここにはレスキュー隊はいないようだ。」
なんですとーーー!!!
まあ、確かに誰もいなそうだったからね。
薄々気づいていましたが。
でも、エリーは自分のリュックを工夫して私を背負って下ろそうとしてくれたり、
その辺のに置いてある一輪車型の担架でバリキと2人で運んでくれようとしたり、
いろいろ考えてくれました。
背負ってもらうのは胸が圧迫されて呼吸が苦しくなってしまい、
担架も2人では重くて運びきれません。
(本来は交代要員を入れて6~8人必要みたい)
もう、歩くしか生きる道はないのです。(笑)
またエリーとバリキに支えながらひたすら歩きます。
りょうくんは高熱がありながら、1人で後を追ってくれくれます。
ガイドが私につきっきりだから1人で歩くしかありませんでした。
私たち)なんか見えてきたよ!
キャンプサイトらしき風貌に期待が高まります。
エリー)まだ、あれはムエルカキャンプじゃないんだ。
なんと、ムエルカキャンプの1つ上のキャンプ(3,700m)。
まだ富士山の頂上レベルじゃん!
と、言うことで、また、ひたすら歩き続け、
なんとか明るいうちにムエルカキャンプに到着。
時刻は17:50。
待ちわびていたテント、寝袋。
ご飯もそこそこに眠りについたのは言うまでもありません。
いろいろサポートしてくれたエリーやバリキ。
荷物を運んだり、水を汲みに行ってくれたり、ご飯を作ってくれたりしたポーターの人たち。
薬をくれたり、心配してくれたコリンとヤガ。
最後まで一緒に登ってくれたりょうくん。
いろんな人に支えてもらいながら、
人生最高地点キリマンジャロに登ることが出来ました。
本当にありがとうございました!!!
あ。ちなみに翌日も下山が待っています。
ムエルカキャンプ(3,00m)からムエルカゲート(1,800m)。
睡眠も取れてすっかり元気になった私たちは、3時間かかると言われた道を
2時間で走破。
高山病って騒いでいた昨日が嘘みたいで、少し申し訳ない。
でも、元気に戻ってこれて良かった。
登山証明書ももらいました。
素人が挑戦できる地球で一番高い山と言われるキリマンジャロ。
特別な技術は必要なく、ガイドやポーターの支えがあれば、
誰でも登りに行くことが出来ます。
日本からタンザニアはちょっと遠いけど、
人生一度の挑戦にいかがですか?
【タンザニア世界遺産 キリマンジャロ国立公園】
おすすめ度: (星5つ)
国/地域:タンザニア/モシ
遺産種別:自然遺産
世界遺産登録年:1987年
入場料及び費用:「【まとめ】キリマンジャロ登山。ツアー会社やルート、料金等の情報あり。」参照
《感想》
キリマンジャロ(標高5895m)は、素人が挑戦できる地球上で最も高い山。
サミット(最終キャンプ地から頂上を目指す事)は、高山病の症状もあり本当に辛かったです。
ただ、その辛さがあったからこそ、登頂できた時に涙が出る程の感動を味わえたと思います。
登山の過程も魅力の1つ。天の川が見える満天の星空、
眼下に広がる雲海、幻想的な夕日などを見る事ができます。
マチャメルートは綺麗な景色を見られるルートとして有名です。
ただ、5泊6日の行程だとサミット日に長時間歩く事になり辛いので、
金銭的に可能であれば6泊7日でも良いかもしれません。
また、僕たちは高山病の薬を服用せず高山病にかかりました。
高山病の薬「ダイアモックス」の服用を検討しても良いと思います。
キリマンジャロ登山は、人生の一大チャレンジとしてオススメです。
◼︎1,2日目の記事はこちら。
→【タンザニア世界遺産】キリマンジャロ国立公園(1)。幻想的な星空が広がる標高3,800mのシラキャンプへ!!
◼︎3,4日目の記事はこちら。
→【タンザニア世界遺産】キリマンジャロ国立公園(2)。星空・雲海・巨大岩…絶景が広がるマチャメルートは鉄板!!
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